RICK OWENS(リックオウエンス)は1994年にロサンゼルスでスタートし、パリ移転後は“ダークで彫刻的”な世界観でモード界に衝撃を与え続けてきました。レザーからファニチャーまで領域を拡張しながらも、ミニマルで実験的な美学を貫く姿勢が熱心な支持を集める理由です。
同ブランドのスニーカーは、建築的シルエット、モノクローム配色、ボリュームソールというコードを足元で体現する存在。ハイファッションの造形美とストリートの実用性を両立させ、コレクション全体のムードを決定づけるアイコンピースといえます。
代表的なのが「GEOBASKET(ジオバスケット)」。元来は“DUNK”の名で発表され、バスケットシューズを思わせるハイカットに、誇張されたタンとサイドジップを備えます。レザーの質感を引き立てる無駄のないパネルワークと厚みのあるソールが、ブランド特有のプロポーションを生み出します。
「SNEAKERS(スニーカーズ/旧称RAMONES〈ラモーンズ〉)」は、クラシックなキャンバスシューズを高級素材とオーバーサイズのラバーキャップで再構築。ミュージシャンへのオマージュに加え、デイリーにも合わせやすい普遍性が魅力です。
「GETH RUNNER(ゲスランナー)」は、彫刻的ラバーアウトソールとボリューミーなアッパーが特徴。柔らかなレザーに対し、鋭角的なラインと“ミルク”の配色がコントラストを生み、ランニングシューズの機能美をモードへ昇華しています。
「ABSTRACT(アブストラクト)」は、厚いプラットフォームとジャンボレースを備えたハイ/ローカットが展開され、キャンバスやリサイクルナイロンを用いたエシカルな素材選択もポイント。丸みのあるラバートゥと直線的ソールの対比が足元に立体感を与えます。
「VINTAGE(ヴィンテージ)」は、極めてシンプルなロートップにスウェードやベジタブルタンニン革を配し、控えめなステッチで仕立てられた“静”のモデル。ブランドらしい長いレースと低重心ソールによって、ミニマルながら確かな存在感を放ちます。
いずれのモデルも、ラグジュアリー素材と前衛的フォルムを調和させることで、ドレスルームとストリートを自由に往来できる点が最大の魅力です。RICK OWENSのスニーカーは、単なる履物を超えて、現代男性のスタイルに思想と彫刻性をもたらす“ウェアラブルアート”と呼ぶにふさわしい存在と言えるでしょう。