1837年創業のHERMES(エルメス)は馬具工房を起源とし、選び抜かれたレザーを伝統のサドルステッチで仕立てるメゾンです。ひとりの職人が最初から最後まで手がける一貫制作と厳格な品質基準が、世代を超えて愛される耐久性とエレガンスを生み出します。アトリエで鳴り響く木槌の音とともに刻まれるのは、長い時間を宿した“オブジェ・ダルチザン”という思想。レザーの経年変化を楽しみながら、自分だけのパティーナを育てられる点も、感度の高い女性から熱い支持を受ける理由です。
象徴的存在が「BIRKIN(バーキン)」と「KELLY(ケリー)」。前者は1984年、女優ジェーン・バーキンの声をきっかけに誕生した実用的トートで、ゆとりある容量と洗練されたスクエアフォルムが特徴。フラップとベルトは荷物を守りつつ、開けた瞬間に現れる刻印が気品を放ちます。後者はストラップ付きレディースバッグとして1930年代に登場した原型が、モナコ公妃グレース・ケリーの愛用写真によって改名されたもので、端正なトップハンドルと着脱式ストラップでフォーマルからシティユースまで幅広く対応します。
よりカジュアルなアイコンとして「PICOTIN(ピコタン)」と「LINDY(リンディ)」が挙げられます。ピコタンは馬の飼葉袋に着想を得たバケツ型で、内張りのない素朴な仕立てからレザー本来の質感を満喫できるうえ、豊富なカラーパレットも人気。開口部をベルトでキュッと締める所作に遊び心が漂います。リンディは1920年代のダンス“リンディホップ”にちなみ、側面ハンドルと柔らかなボディが躍動感を演出。ジッパー開閉と可動式ハンドルにより、肩に掛けたまま荷物を出し入れできる機能性も魅力です。
デイリーから旅行まで幅広く活躍するのが「GARDEN PARTY(ガーデンパーティ)」、「BOLIDE(ボリード)」、そして「EVELYNE(エヴリン)」。ガーデンパーティはキャンバス×レザーの軽快さとクルー・ド・セル留め具がポイントで、サイドボタンを外すと開口部が大きく広がり週末旅にも対応。1923年発のボリードは世界初のラウンドジップ搭載バッグとして知られ、流線形フォルムに加え、着脱式ストラップがクラシックとスポーティーを両立させます。エヴリンはもともと馬具用ツールバッグとして誕生したクロスボディで、パンチングの〈H〉が軽快なアクセント。調整自在なキャンバスストラップと軽量ボディにより日常の相棒として愛用され、“使うほどに自分の一部になる”というエルメスの真髄を体現しています。