Maison Margiela(メゾン マルジェラ)のバッグは、アヴァンギャルドな思想と職人技を融合させた“オブジェ”のような存在です。ブランドを象徴する「匿名性の裏地」やステッチワークは、持つ人の個性を引き立てながらも過度なアイコン化を避ける独自の美学を語ります。レディースラインのバッグはその哲学を最も日常的に体感できるプロダクトであり、控えめながら深いこだわりを求める大人の女性から厚い支持を集めています。
まず、ブランドのアイコンである「 5AC(ファイブエーシー)」は、フランス語の「sac(バッグ)」を逆さに読んだ名称。クラシックなドクターバッグをベースに、内袋を敢えて外に引き出す構造やハンドペイントのコバ処理など、メゾンならではの“裏側を見せる”アプローチが光ります。ミクロサイズからバケット型まで幅広いバリエーションを展開し、通勤からオケージョンまでシーンを選ばない懐の深さも魅力です。
続いて 「Glam Slam(グラムスラム)」。2018年春夏コレクションで登場したキルティングバッグは、マルセイユ製キルト「マトラッセ」に着想を得たふっくらとしたフォルムが特徴。旅行中に抱えるクッションのような安心感を“無意識のグラマー”と呼び、装う人にリラックスと遊び心を同時にもたらします。
よりエッジの効いた選択肢として人気を博すのが「 Snatched(スナッチト)」。2019年のアーティザナルコレクションでデビューしたこのモデルは、ドラァグカルチャーのスラング「snatched=最高にキマっている」に由来。折り紙から着想した非対称シルエットに加え、ハンド、クラッチ、チェーンショルダーの3ウェイで持ち替えられるフレキシビリティが魅力です。
そして最新アイコンとして急浮上している「New Lock(ニュー ロック)」。山羊革とリネンを掛け合わせた二層構造に“日用品の南京錠”を思わせるインジケーター・ロックを配し、メゾンのコードである「倒錯したスノッブ精神」—すなわち上質と素朴を反転させる発想—を体現します。スクエアやホリゾンタルなど端正なフォルムながら、素材のコントラストがコーディネートに奥行きを生み出します。
これら4モデルはいずれもハイエンドなレザーと実験的デザインを両立させ、日々の装いを静かにアップデートしてくれる存在です。大胆さと知性を兼ね備えたメゾン マルジェラのバッグは、流行よりも自分らしさを重視する女性のワードローブで、長く愛され続けることでしょう。