2018/10/24
大切な"もう一つのスキンケア"、忘れていませんか?
女性ならみな、お肌を大切にしますよね。でも足元のお肌、レザーシューズはいかがですか?
意外かもしれませんが、レザーシューズは異性からも注目される大きなポイントの一つ。
女性が男性のスーツの値段を当てることは難しくても、マフラーやストールの良し悪しはわかりますよね。
これは、人間は自分が直接関係するもの以外を正しく評価できないことを意味しています。
逆に考えると、ユニセックスアイテムに周囲の目はとりわけ敏感であるということです。
革靴にはお金をかけなさいと言われるのはこういう理由があります。
ただ、お金をかけて良い靴を買ったのちのケアまでは、誰も教えてくれないのは問題です。
このページで、基本的かつ、最高級レザーもこれで安心。という手入れを一度確認してみてください。お手持ちのレザー製品が一気に美しくよみがえるかもしれません。
まず、レザーにケアが必要な理由ですが、適切なケアがないと付着した汚れが目立つことはもちろん、
牛のお肌も人間のお肌と同じく、乾燥して硬化したり、最悪ひび割れてしまいます。
人間のお肌はある程度再生しますが、レザーのひび割れは直りません。
カラカラに乾いたレザーシューズで階段の角を蹴ってしまうとひとたまりもありません。
また乾燥した革に雨が染み込むと、雨の中の汚れなどが一気に浸透し、まばらな模様ができてしまいます。
この原理はエルメスなどの使用する最上級レザーにもおなじく当てはまり、それらを事前に防ぐため、ケアが不可欠となります。
大切なブーツやカバンにひび割れ、雨による色素沈着を起こさないために必要なのはとにかく保湿です。保湿された革は非常に強く、雨や擦り傷にも負けません。
保湿は人間のお肌の手入れと全く同じ順番で。
まず汚れを落とし、それからクリームを染み込ませてゆきます。
こちらが必要&あればいいお手入れ道具です。
とはいっても、イキナリこんなに必要ありません。
絶対必要なのは、
1.汚れ落とし用の馬毛ブラシ (左下)
2.汚れ落とし用クリーニング液 (右上)
3.保湿、補色クリームを塗りこむための馬毛ブラシ(右上端)
4.保湿、補色のためのクリーム(右下ゴールドxブルー)
5.汚れ落とし用、磨き用の布(あとでご紹介します。)
これで十分です。
ブラシが2つ必要なのは、汚れ落とし用のブラシでクリームを塗ると靴に汚れが付着してしまうからです。
また、保湿補色クリームを塗るブラシは、靴に望まない色がつくことを避けるため、お持ちのクリームの色に合わせて使い分ける必要があります。
とはいえ通常は黒、茶2色ほどで十分でしょう。
これに加えて
1. 補色をせずに保湿だけしたい場合(珍しい色で該当する色のクリームがない/財布、カバンなど、他のものに色移りすると困るものなど)
- 左上の無色クリーム
2. 鏡面反射レベルのテカリを出したい場合
- 右下のワックス
を用いることができます。
クリームはフランス・サフィール社(SAPHIR)のものをつかっています。
最高級シューズメーカーも揃って用いる信頼のブランドで、エルメスの職人さんも同じものを使っていました。
日本でも比較的容易に手に入りますが、もしお探しのカラー、アイテムなどございましたらご相談ください。
デモンストレーションのため、エルメスのブーツに登場いただきましょう。
こちらエルメスのNEDJIというコンクール用ユニセックス乗馬ブーツ。
つまり乗馬の練習用ではなく、あらたまった機会で、優雅に魅せるためのブーツです。
とはいえスポーツ用だけあって、激しい動きにも耐える可動性や水に濡れてもOKなハイドロレジスタントレザーを装備。
ソールにもHマークが浮き上がり、土の馬場を歩くとHが転々と写るというこだわりよう。
実は巨匠ピエール・アルディがデザインしたという隠れ名作です。
エルメスの乗馬用アイテムには名作が色々眠っていますので、一度チェックしてみてください。
スニーカーがわりに真夏以外オールシーズン履いています。
足首の美しいポイントとなるクルー・ド・セルは単なる飾りではなく、上にふくらはぎ部分を覆うパーツを装着し、ロングブーツにもなるという優れもの。(乗馬ブーツはフィッティング命のため、足のサイズ、ふくらはぎのサイズをそれぞれ選択、もしくは、フルオーダーする必要があるのです。)
あまりに使い勝手が良すぎて1シーズンでかかとがチビたので交換しました。
レザーさえしっかりケアしていれば、こうして何年でも履けるのが良い靴の素晴らしさです。
とはいえ1ヶ月も履くと、画像のように汚れ、すり傷が目立ちます。
これでは美しくないので、ケアをしていきます。
まずブラシで汚れを落としていきましょう!
ブラシをレザー表面、ソールとの隙間に丁寧にかけてゆきます。
撫でるというよりは、ホコリを掻き出すイメージで短いストロークでブラッシングします。
これだけで大体のホコリはおちますが、クリームをしっかり浸透させ、保湿、補色効果を高めるため、汚れ落とし用クリーニング液を使います。
布に汚れ落とし薬剤を染み込ませ、優しく拭き取ります。
この時、あまりゴシゴシする必要はありません。
さらさらーっと表面の汚れを落としながら軽く拭いてゆきます。
拭き布ですが、私は100均のワイングラス用布巾を下ろして使っています。
まずは最後の仕上げ用に使用し、汚れが目立ってきたら、汚れ落とし用へと下ろします。
こちらがブラシ、クリーナーによる汚れ落とし後。まだ多少のかすり傷は見えますが、問題ありません。
キレイになった靴に保湿補色クリームを塗っていきましょう!
ゆっくり足先に向かってブラシでクリームを伸ばしてゆきます。
ある程度クリームが全体に伸びたら、革の表面をシャッシャッとブラシでこすり、
摩擦熱によってクリームを革の奥深くへ浸透させてゆきます。
クリームがムラなく馴染んで、全体にツヤ感が出てきたらOK
ポイントは、スライドさせる方向を靴の前後に統一させること。
そうすることで微細な光の通り道を作り、流れるような反射をうむことができます。
下(右足)はブラッシング前。上(左足)はブラッシング後です。
最後は布でピカピカに仕上げましょう!
完成!エルメスレザー本来の存在感です。大切にケアすると、重厚感、色艶がどんどん深まってゆきます。
お肌のケアに慣れておられる女性であれば、
クリーニング→保湿という流れは理解しやすいかと思います。
ご紹介したのはたった数分でできる基礎的なケアでありながら、レザーの寿命、美しさを保つにはこれで十分というレベルのものです。
モノは人を選ぶとはよく言ったものですが、モノの選択からはその方の審美眼や経済力が伺われますが、それをどう維持してゆくかというところにこそ人柄があらわれます。
ぜひ世界最高のエルメスレザーを、末長く美しくお使いいただけたらと願っております。
他のアイテムのケア方法についてもお気軽にご相談ください。
(補足)
私は靴に防水スプレーをかけることはしません。
スプレー内に含まれる化学物質が、長い目で見ると不可逆的なレザーの硬化、乾燥を起こす可能性があるからです。
簡易なオールインワン的靴墨もありますが、これも同じ理由で、長年付き合ってゆきたい高級なレザーにはお勧めしません。
人の肌にも皮革製品のにも美への近道はないのですね。
ご紹介したのは基本的な手順、方法ですので、大きくダメージが生まれることはないかと思いますが、念のためご自身の責任でなさってください。